Mickey's world

libramikio.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
2018年 11月 29日

旅の宿

今回は母のショートステイが急に決まったものだからなかなか希望エリアでの宿が取れず、ようやく宿泊地を佐久に変えて、今夜の宿を取った。

その名も佐久ホテルという。

貧乏旅行だからもちろん素泊まりで、宿賃も、入湯税と消費税を合わせ5,816円。安上がりであると喜ぶ。



旅の宿_e0126386_19451870.jpg

チェックインを済ませ、初めてヤッカイになります、よろしくと仁義を切ると、中居さんが親切に説明をしてくれた。

まずこの宿では、あまちゃ・天茶(甘茶ではなく)を召し上がって頂きたい、この天茶は当地特産の・・・と口上。

更にお好きであれば天茶に焼酎を入れると大層美味である、と。

この説明は僕にとり実に有益な情報であり、早速いただく。

うん、美味、すこぶる美味。

あんまり飲むと風呂で倒れるので、今はそこそこにし湯を尋ねると、当館の湯は湯船の真下1メートルに源泉があり、コンコンと湧き出る湯は豊富なメタケイ酸を大量に含み・・・と口上。

すげぇ、ということで早速入湯。

風呂の写真は撮らなかったが、うーん、大地から出てきたばっかりといった泥臭さ(気分よ)があり、そこらヘンの小洒落た温泉にはない一本気ないい湯である。

(そして後々、この湯の凄さがわかってくるのだ)







旅の宿_e0126386_19464138.jpg

湯上がりに寝間着とドテラ姿でまたも件の囲炉裏に戻り、あまちゃでかっぽれの続きを行う。

改めて宿の様子を窺うと、かなり凝った造りである。

ここはホテルという名の旅館と考えてよいが、どちらかというと地場の名料亭として(佐久という土地柄)鯉料理が名物のようで、かなりハイソな面々が、しかし奥ゆかしく案内されながら行灯の灯る部屋に吸い込まれてゆく。

ふと目をやれば「当館の部屋名は実際に泊まった文人の名を使っている」との札が。

本当だ。

行灯をよく見れば、白秋さんとか、牧水さんとか、藤村さんとか華やかな名前の部屋が続く。

(更にそして後々、この宿泊者たちの凄さがわかってくるのだ)







旅の宿_e0126386_19485367.jpg

なんと、井泉水(せいせんすい)さんの間もある。

荻原井泉水。そう、尾崎放哉が師と仰いだあの井泉水である。

すげぇ、を心の中で連発しながら、偶然ではあるにしろ、またリーズナブルではあったにしろ、何という凄い宿を選んだことかと、かっぽれを踊りながらタマシイは佐久の夜空に欣喜雀躍したのであった。




凄さについての追記:

佐久ホテルHPより抜粋・・・

武田信玄も入湯し、謝礼に拝領した掛軸が残っています。中軸には長さ一尺、太さ一寸の円柱形水晶一本棒が使われ、覗けば旭が見えることから「旭湯」となったと伝えられています。(注:宿の名前とは別にこの源泉の名前が独立しており、旭湯と呼ばれる)

●若山牧水、島崎藤村、北原白秋、種田山頭火、小林一茶、葛飾北斎など文人墨客にも愛された温泉です。

白玉の歯にしみとおる秋の夜の酒は静かに飲むべかりける(大正111014日 佐久ホテルにて 若山牧水)(注:あの、呑兵衛の聖句といわれるこの歌は、なんとこの宿に滞在中に詠まれたのであった!)

そして何より凄かったのは・・・中居さんと思い込んでいた人が、現在の女将であったこと!



by libra-mikio | 2018-11-29 19:55 |


<< 落葉松 晩秋      The 秋 >>