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2018年 11月 25日

無言館への回帰

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1123日 昼前に無言館に着く。

館には入らず、周囲を歩く。

ここはどの季節が善いということはない。

いつも、善い。





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きょうは、無言館を包む森が黄葉している。

昼近くの冬の低い太陽がコナラの葉を透過する。

しかし此処を訪れる人は、優しい黄褐色を特に気に留める素振りはない。

此処に自然を愛でに来る人は居ない。

此処は 人為 の墓標であるから。





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無言館の奥まったところに 時の蔵 はある。

「戦没画学生の遺作、遺品を末永く保存し、修復してゆくための施設」だという。

「傷ついた画布、焼け焦げたスケッチ帳の一つ一つの命を・・・よみがえらせる」場所だという。

人目に触れぬ場所に密やかに建つ 時の蔵。





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無言館の壁は、一見、荒い。

窪島誠一郎氏は、館全体をカンバスにしたかったのだろう。

理不尽な時局に筆を措かざるを得なかった画学生のみ魂は、

九段下ではなく、塩田平の一隅の、カンバスで出来た建物を見つけ真っ先に帰ってくる、と信じたのだろう。





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僕が此処に来る時は、いつも無言館の碑に樹々の影が色濃く落ちている。

どんな季節も、朝も昼も、誰そ彼の頃でも。

この場所はハレでは決してないことを、訪れる者に伝える。

春夏秋冬、絶えることなく影に覆われ続けるという、無言のレジスタンス。





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それでも、いや、だからこそ、今、無言館を包む森は優しく慎み深い色彩で彼らを揺籃している。



by libra-mikio | 2018-11-25 21:26 |


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