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2018年 08月 11日

手首

手首_e0126386_20105979.jpg

人は誰しも幼時の神話を持つ。

僕にも23つ、その類いの記憶がある。


3歳だったか4歳だったか、僕は父母と、今はない古い実家の4畳半に起居していた。

ある時、それはきっと僕一人の時であったが、部屋の東と南の2面を覆うガラス戸の鍵穴から、黒い手首が出ているのを見た。

その時の印象は、無数の鍵穴から無数の手首が出ているというものであったが、考えてみれば鍵穴は両方向の2箇所しかない。

しかし、とにかく、黒いペンキがまだ光沢を失わずしっかりと塗られたような、真っ黒な手首が窓と直角に生えているのを見た。


恐怖という感覚はまだなかった。しかしはっきりと、嫌なものを見たという感触は有った。

長じて後、このことは誰にも喋ってはいない。


今日の夕方、一雨去った後、夕日が突然姿を表し、家の玄関の西向きの窓から光を注いだ。

明かりを点けようと伸ばした手の影が、前述の神話を急に蘇らせ、慌ててカメラを取りに行った。



by libra-mikio | 2018-08-11 20:13 | Mic記


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