湖岸の周回道路には、先ほどまでの雨が上がった後の、強烈な湿度が満ちていた。
強い日差しが否応なく、せっかく落ちた雨滴をまた空に返し始めている。
ふと見上げると形のいいクルミの実があちこちに下がっていた。
僕にはもう、これがオニグルミなのかサワグルミなのか区別がつかない。
口惜しさから言うのではなく、今の僕には、クルミ、でいい。
何故、ヤマユリを振り仰ぐのか。
実は切り立った法面の上の方から道路に向かい咲いていたのだ。
野草である。
でも、こんなにゴージャスな野草がほかにあるだろうか。
神奈川県の県花になっている。
ただしこの花の名前ををひらがなで書くと、悲しく忌まわしい出来事が思い起こされてしまう。
毎年、合歓を探しに行く。
小諸の、とある場所の合歓は大変に美しかった。
実はうちの近所にも美しい合歓があったのだが、最近は不思議ときれいにはならないのだ。
でもね、日曜日にある湖のほとりで期待の出来そうな合歓を見つけた。
まだ少し早かった。
来週は、もっと妖艶な姿を見せていることだろう。