道。みち。
僕は時折、道にすごくいとしさを感じる。
都会の大きな道路ではなく、隠れた鄙の、土地の人しか使わないような道に。
道の起源をよく想う。
全ての道は、人々が通行するために開かれたのだろう。
初めはそれこそ獣が開拓したかもしれないが、そのうち人が使うようになったのだろう。
通行人の量が多ければ、それは大事な道ということになり、今の世で言う幹線道路になった。
一方、田舎の小さな道は、グローバルなニーズこそなかったが、ローカルでは大切なものとして扱われてきた。
その田舎の鄙びた道に、時々とてつもなく愛着を感じるのだ。たとえ初めて訪れたとしても。
春まだ浅い里を歩く。
用水路でもあるであろう小川がある。
石垣が組んである。
電信柱がひとつ、ふたつ、と並んでいる。
そして梅が笑っている。
向こうからお爺さんでも歩いてこないかなぁ、と待っているのだが、一向に人の気配がない。
鄙である。