Mickey's world

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2015年 12月 21日

Mic記 1221,2015

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隠居:おやおや、熊さんと八つぁんが何やら揉めていなさる。
熊:おい、「新しい」てぇ言葉があるが、なんて読むね?
八:馬鹿言ってんじゃねぇ。「あたらしい」に決まってやがらぁ。
熊:ほぉ、やけに自信たっぷりじゃねぇか。それじゃ「新井さん」はどうでぃ。
八:お、この野郎、突っかかんねぇ、「あらいさん」じゃねぇか。その辺の洟垂れでも判らぁ。
熊:ふふ、カッカきやがったね。それじゃぁ聞くが、「新」てぇ字は、「あた」か、「あら」か。
八:なにを、コンチクショウ、そりゃお前、そりゃお前、そりゃお前・・・
熊:これだからオツムリの弱ぇ奴はいけねぇ。「新」はいつもは「あら」だ。あらいさんだけじゃねぇ。新巻鮭は「あらまきじゃけ」だ、新手は「あらて」だ・・・
八:うーん、おかしいじゃねぇか、俺はお父つぁんから確かに「あたらしい」と習ったが、お前に言わせりゃ「あらたしい」になっちまう。
熊:そうよ、本当は「あらたしい」が正しいのよ。天竺じゃみんな「あらたしい」「あらたしい」と言っていなさる。
八:冗談じゃねぇ、天竺の言葉は日の本の言葉と違うくれぇ、サンデー先生に教わっってらぁ。
熊:お、そいつは済まねぇ、つい出まかせを言っちまった。でもよ、八公、てめえほどだらしねぇ男はいねぇな。
八:へーへっへ、この野郎、語るに落ちるたぁこのことだ。手前ぇ今なんつった。
熊:「だらしねぇ」と言ったのさ。
八:しょうがねぇな、ったく、お前ぇのオツムリもお里が知れてらぁ。
熊:なんだこの野郎、何が言いてぇんだ。
八:これだからインスタントインテリは困るねどうも。お前ぇ今、「だらしねぇ」と言ゃがったろ。
熊:それがどうした。だらしねぇからだらしねぇんだ。
八:教養のない御仁と付き合うのも疲れるね。ありやぁ「しだらがねぇ」というのが天竺の本流よ。
熊:お、天竺を持ち出しやがったな。何を証拠に偉そうなことを言ってやがるんだ。
八:横町の三味線のお師匠さんはどんなうわさが立ってるねぃ。
熊:おう、あの小股の切れ上がった粋な女か。見かけは涼しいが、どうも妖しい。近所じゃかかぁ共が井戸に集まっちゃ、あることないことあげつらい、どうもあのお師匠さんはふしだらだねぇ、なんて言ってやがる。
八:お、もう一回言ってみねい。
熊:なんだよ、どこを言うんだよ、ふしだらか。
八:お前ぇ、自分で「ふしだら」と言ったな。「ふしだら」てぇのは「しだらがない」てぇことだ。
熊:・・・
八:もう一遍言うぞ。つまり「ふしだら」てぇのは「しだらがない」てぇことだ。それが天竺のもとの言葉さ。天竺からもろこしを下ってお前ぇのオツムリに届くころにゃ、後先が起こって「だらしがねぇ」ていうことになったのよ。判るかコンチクショウ。
熊:うーん、なんだか判らねぇが、日の本の言葉はむづかしくていけねぇ。
隠居:おやおや、熊さんと八つぁんの掛け合いは、目くそ鼻くそかと思いきや、素晴らしいものじゃないかい、なあ婆さん。
婆:お前さん、素晴らしい、の語源は「狭くなる」「縮まる」という意味の動詞「搾る(すばる)」が形容詞になって「すばらし」になったんですよ。だからその意味は「細く貧弱である」ということなんですよ。いつのまにやら、正反対の意味に使われていますが、お前さんも覚えといてくださいな。



・・・くたびれた。やめる。寝る。
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X-T1 + XF35mm F2R WR

by libra-mikio | 2015-12-21 22:59 | Mic記


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