公園に移築された古民家である。 従って襖などは取り払われている・・・それが想像を膨らませる。
襖を取り払うとなれば、 この日は村の衆がこの家に集まる特別な日なのであろう。 婚礼か。
とうに竈では湯が何回も湧かされ、 幾品ものご馳走が作られている。
新郎は狐の青年で今日こそはヒゲがいやがうえにもピンと張っており、 新婦は猫のお嬢さんで猫なで声を出している。
親族は既にマタタビのお浸しなど突つきながら猿酒で出来上がっており、 新郎の狐の伯父貴などは先ほどから自慢話で騒々しい。
一方では新婦の父猫が神妙にミケやトラの親族に泣き顔を見せまいとしている。
新郎と同じネコ目イヌ科ではあるが、 キツネ属と折り合いの悪いタヌ公のせがれタヌ吉たちは、 招かれなかった宴を庭の垣根の隙間から覗き、
「あぁ、 おいらも婚礼のご馳走、 食べてみてぇ」 と思っている・・・
長くなった。 しかしボクには、 床の間の前の喧噪が手に取るようにわかるのである。
OLYMPUS M-1 + G.ZUIKO50mm F1.4 + X-TRA400