ここ数年、流されているうちに秋になっていた。
秋が好きな僕にとって、これは残念なことだ。
だって、気づいたら秋、というのは観たい映画を途中から観るようなものだから。
ところが嬉しいことに、今年は不思議と、秋を迎える心の支度が出来ている。
もちろん回りの自然は季節の狭間の曖昧な時間帯ではあるが、今年の僕の心には
もう、はっきりと、秋の息吹が感じられる。
探さなくても、自然界のほうから僕に語りかけてくれる。
僕は静かに心を開いているだけでいい。
これまで、今頃の曖昧な季節が好きじゃなかった。
暑い夏は終焉の疲れを見せ、実りの秋には程遠く、身の置き場に困るような季節だった。
でも今年は違う。
すでに秋の足音を確実に聞き取っている僕にとって、今の季節は絢爛たる美しい秋への
プレリュードだ。
コンダクターはすでに指揮台に登っている。
弦が、管が、本演奏への期待を鎮めるように、美しい音色を出す準備をしている。
EOS 40D + EF-S17-55mm f/2.8 IS USM
箱根 湯坂路(鎌倉古道)にて