電線のない電柱を見つけた。
それは奇異であり、この上ない違和感があった。
どちらかと言うと、嫌な感じのものであった。
倒せばいいのに。
この世から無くしてしまえばいいのに。
でも、それを敢えて撮る自分がいる。
美しいものが好きだと公言し、事実その部分が99%を占めるのに、昔から僕は禍々しいものに惹かれる素地を1%持っている。
若い頃から続く現象だが、何気なく本屋に入り、何気なく棚を回ってふと手に取る一冊が、明治時代の血みどろ画の画集であったりする。
本の背表紙のタイトルを見て選ぶ訳ではない。
おそらく僕が惹き寄せられるのだろう。
そういう時、僕の中の99人の僕は、早く本を閉じろと叫ぶ。
しかし同時に、無関心を装う1人の僕が、存在する。