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2017年 01月 03日

独歩を追って蘆花に逢う

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国木田独歩が好きであることは既に書いている。その武蔵野収蔵の掌編に「たき火」がある。冒頭部分を転記する。

北風を背になし、枯草白き砂山の崕に腰かけ、足なげいだして、伊豆連山の彼方に沈む夕日の薄き光を見送りつ、沖より帰る父の舟遅しと俟つ逗子辺りの童の心、その淋しさ、うら悲しさは如何あるべき。御最後川の岸辺に茂る葦の枯れて、・・・見かへれば彼処なるは哀れを今も、7百年の後にひく六代御前の杜なり。木がらしその梢に鳴りつ。

そう、「たき火」の舞台は逗子なのである。そしてその場所は田越川が逗子湾にそそぐ場所、つまり今のR134の渚橋のあたりだと思われる。
では行くしかない。ブラミッキー(笑)。

横須賀線の逗子駅から海まで歩くことにした。
するとまず、御最後川、六代御前についての知識が体得できる。しかし今日のテーマではないから飛ばす。
住所案内の地図を見ると、田越川の海に近い富士見橋辺りに「蘆花の碑 独歩の碑」という表示がある。
そこで独歩の残り香に出逢う訳だが、同時に徳冨蘆花が現れた。
よく見ると近所には蘆花記念公園というものがあり、郷土資料館というものが整備されている。
独歩と蘆花とはどのような関係だったのか?
では、郷土資料館に行ってみよう。
独歩を追って蘆花に逢う_e0126386_16164975.jpg
郷土資料館は桜山の蘆花記念公園の上の方に存在し、その木造の建物は徳川家16代当主徳川家達さんの別邸であったそうな。
そこからの眺めは、斯くの如く良い。
ネーミングはあくまで「郷土」資料館なので、様々な展示があったが、やはりメインは徳冨蘆花にまつわる事物である。
僕は蘆花についてほとんど知識がなかったので勉強になった。
で、独歩と蘆花の関係だが、独歩は蘆花のお兄さん、徳冨蘇峰が興した新聞社・民友社に入り国民新聞の記者となる。
そして蘇峰ゆかりの逗子にある(あった)やなぎ屋という旅館に滞在することが多く、そこで同じく滞在していた蘇峰の弟・蘆花と親しくなったという訳だ。

こうして僕は、独歩を追って蘆花に出逢った。
更に素敵なことに、この日それまで知らなかった、徳冨蘆花著「自然と人生」という本と巡り逢った。
この本には実に煌めく美文がちりばめられている。僕はその日の帰り藤沢のジュンクですぐに買い求めた。
有難いことに岩波文庫から現役の出版物として刊行されている。

更に驚くべきことに、この岩波文庫の1933年の、荒正人という人の解説を読むと、
「『自然と人生』と幾らか似た作品として、国木田独歩の『武蔵野』や、島崎藤村の『千曲川のスケッチ』などを考えることが出来る。」
とある。
これを読んだ時の僕の「ドヤ顔」はおそらく相当なものであったろうな(笑)
独歩を追って蘆花に逢う_e0126386_15393962.jpg

ところで冒頭の独歩の「たき火」だけど、ほぼピンポイントで、いま現在「なぎさ橋珈琲」(昔の逗デ)がある場所だと判った。
え!?そうなんだ!


by libra-mikio | 2017-01-03 17:10 | Mic記


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