ゆうべ浜辺を もとおれば
昔の人ぞ しのばるる
寄する波よ かえす波よ
月の色も 星のかげも
浜辺の歌は、下の説明のように、林古径が辻堂海岸の思い出を昇華させて描いたものだ。
このような名曲が、我が故郷の情景を織り成したものであることに、僕は誇りを感じる。
朝な夕な、微睡むような光景を見せる海を、どうして愛さずにいられようか。
しかし同時に、僕は嵐の海を知っている。実は小さい頃から今に至るまで、海が怖い。
そして湘南だって津波と無関係ではない。
もう疾うに亡くなった祖母は腰越の人で、子供の頃関東大震災に逢い、津波を体験している。
子供の僕は祖母からよく、津波の引き波の強さについて聞かされたものだ。
海はいい。包容力がある。しかし海の持つ根源的な、暴力的な力を侮ってはいけない。