僕は漠然と、零戦のコクピットはもっと広いと思っていた。
この写真のとおり、僕は実際に現海自・鹿屋航空基地資料館で、実物を見ていたにもかかわらず。
五尺の命がこのコクピットに座乗すれば、身動きもままならない。
仮に六尺ある僕自身に置き換えれば、これは超満員の電車の閉塞感のようなものである。
電車と違うのは、群れの中の孤独などという柔いものではなく、絶対的な孤独。
空は広い。
しかし搭乗員の居住空間はかようなまでに狭い。
そして十死零生。
・・・絶対的な孤独。
鹿屋を飛び立ち、索敵を続け、敵機動部隊発見!
敵空母のリフトだ! リフトだ! リフトだ!
操縦桿を力いっぱいに押し込み、急降下により発生する揚力をあらん限りの力で押さえつけ・・・
ツーーーーーーと打電しながら、散る。
神風、振武、回天、桜花、震洋・・・僕は改めて、深く頭を垂れる。